普通、テーブルって、家に届けられた日から上にジュースの入ったコップを置いたりしても構わないですよね?万一テーブルの上の水差しを倒したとしても、すぐに起こしてこぼれた水を台拭きで吸い取れば良いだけのことですよね?
それが日本の常識に過ぎず、ここでは通用しないのだということを、着いて早々知りました。我が家の食卓は、一枚板を彫り上げた最高級品!…でも何でもなく、普通の木で出来た、重たいテーブルです。絶対にベニヤの合板ではなさそうな、重たさです。まぁ、滅多に動かさないから重さは良いのですが…。
天板が、平らで木なんです。…って言っても当たり前に聞こえますね。ニスを塗るとかしてない、削ったままの木なんです。たまに素手でこするとトゲがささります。ジュースをこぼせば染み込みます。絶対に染みが取れなさそうです。
テーブルクロスをかければいいか…と思い、捜し求めました。一番目立つのは、フランス人観光客用の土産物屋です。普通の白い大きな布(畳3枚分ぐらい?)に、手作り感溢れる刺繍が所々ほどこされているものが、定番土産らしいです。2Kの社宅でちゃぶ台に所狭しと食料を並べて食べる日本人と違って、いいテーブルで広々と食事をする先進国の方も居るんですねぇ。主人は『そういう布でも何でも買えばいいじゃないか』って言いましたが、綿100%っぽい素材だと、結局ジュースをこぼした時にテーブルに染みが残ります。永遠にアリを呼び寄せることになりそうです。
あっちこっち探しましたが、全然見つかりません。柄も色も不問、『お花見の時に場所を取るようなブルーシートでも構わない』…とか、『殺人現場から死体を運び出すような分厚いテキスタイルでも十分(中古はイヤだけど)』…とか、かなり妥協して、フランス語の堪能な日本人にも呼びかけてみましたが、見つけられませんでした。
荒削りの木がむき出しになっている所に食器を並べるのもイヤなので、とりあえずはランチョンマットを並べてからその上に食器を並べることにしました。わざとポップなデザインのを選びました。これも観光客用の土産物で、わらじスリッパと同じようなやわらかい素材で出来ています。…防水性のものが全く見当らなかったので。
日本ではカワイイ雑貨とか全く興味がなかったのですが、妙な所に連れて来られて全然慣れないうちに、台所のこと(食材の調達、管理、献立等)に責任を持たなければならなくなり、日本では100円ショップに行きさえすれば解決できるような簡単なことでつまづく毎日。結構ガマンの限界でした(当時の私の限界点は低かったようです)。一種の赤ちゃん返りみたいなものかも知れません、カワイイ雑貨で癒されてみたいなんて思ったのは。
昼ごはんを食べに戻った主人に言われました。『何この悪趣味なのは?!』…って。普通のテンションなら、『悪かったわね、フン!』って言うべきだったのですが…そもそも普通のテンションの私が実用性の低いデザインなんかわざわざ選ぶはずがないのですが。…声をしゃくり上げて泣きました。入国してきて1週間ぐらいの頃だったと思いますが、何もかも勝手が違い、なのに誰も容赦してくれない(ように錯覚してました…すみません)、来るんじゃなかった、日本に帰りたいって思いを全部込めてのことですが。
離れて見ていたメイドさんはビックリです。まさか、防水性の高い布たった一枚を見つけられなかったことで大の大人が泣いているとは思いません。食卓に着くなりパトロンがひとこと言ったことでマダムが大泣きした…きっと食卓が原因(ただの引き金です)…私のせい?私がコップにお茶を入れておかなかったせい?!…って思ったのかも。
それ以後、パトロンの帰宅にはものすごく気を配ってくれるメイドさんになりました。テーブルセッティングにも熱心で、ポップなデザインのランチョンマットの上に、プラスティック製の平たいお皿を載せ、その上に味噌汁茶碗を載せてくれます。西洋のスープのつもり?何かヘンなのって思ったけど、申し訳なくて指摘できません。




